神奈川県大磯町における運動器機能低下スクリーニング及び介入に対する産官学の取組(アルケア株式会社)

2018年1月11日

弊社は、整形外科のギプス・人工肛門装具等の医療材料を主に医療機関向けに提供させて頂いている医療機器メーカーです。この度、神奈川県大磯町様と東海大学様と弊社の産官学連携により、一定の知見を得たので報告させて頂きます。日本は、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進み、地域住民の健康維持の為には、科学的妥当性・再現性高いシステムを構築し、事業として確立することで地域経済が持続可能になると考えております。

その課題解決のために、大磯町の中﨑町長(医師)、東海大学生涯スポーツ学科中村豊教授(整形外科医師)、弊社代表の鈴木輝重が“おおいそ産官学コンソーシアム”(以下産官学)を結成いたしました。産官学共通の課題認識として、介護主要因である運動器機能低下≒ロコモティブシンドローム (以下ロコモ)を見つける特定健診のようなスクリーニングの仕組みから運動機能低下者を抽出し、保健指導のような個別性の高い介護予防を適切な行政リソースで実施し身体機能向上が実現されることとしました。三者の役割は、大磯町は住民のリクルート及び場の提供、東海大学は研究責任及び学生派遣、弊社は企画及び必要物品の提供を行い実施致しました。平成27年度は経済産業省の委託を受け、健康寿命延伸産業創出推進事業として実施致しました。

運動器機能低下スクリーニング(ロコモ健診)は、ロコミル(ロコモを診る)、介護予防教室は、アンチロコモ(ロコモにならない)教室とそれぞれに名称をつけ実施致しました。

ロコミルの測定内容は、ロコモ度テスト(立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25)と下肢筋力測定器(ロコモスキャン)による測定を実施し、日本整形外科学会が策定した臨床判断値により、ロコモ度1(移動機能の低下が始まっている状態)、ロコモ度2(移動機能の低下が進行している状態)と評価します。住民の利便性を考慮し、大磯町で行われている集団健診の場で実施しました。

 

アンチロコモ教室の実施内容は、「ときどき学び」(健康講話:健康リテラシー向上を目的)

「日々努力」(運動指導:自宅での下肢筋力向上のセルフエクササイズのフォームチェック)「日々振り返り」(介護予防手帳:毎日の筋トレ・有酸素運動・体調等の管理)「ときどきからだチェック」(下肢筋力測定:セルフエクサイズの効果測定)を月に1回町の公的施設に集まって、約2時間実施しました。半年で全6回の介護予防教室です。下肢強化特化型の介護予防教室は、参加者の下肢状態に合わせて、高強度・中強度・低強度・ケア体操の4種類で個別性を確保しています。

まずロコミルの横断結果をお示しします。2015~2016年の新規受診者のみの798名(男性305名/平均年齢66.4歳±7.6歳、女性493名/65.5歳±7.4歳)でメタボ該当者は約2割(177名、22.2%)であるのに対しロコモ該当者は約6割(455名、57.0%)となりました。また、全体の14.4%(115名)がロコモ・メタボの両方に該当していることが分かりました。

男女・年代・体型別にみていくと、男女ともに加齢に伴い、ロコモとメタボのダブルリスクに移行している可能性を示しました。また、現在の特定健診では、健康・異常なしと診断される方の中の男性の約3割、女性の約4割がロコモのみに該当するケースも散見され、太っていてロコモ、痩せていてロコモの異なるキャラクターが浮かび上がりました。男女ともに半数以上(男性52.8%、女性59.7%)がロコモに該当していることから、ロコモ健診において運動機能の低下を見つけることは男女問わず有用であると考えられます

男性のメタボ該当率(33.8%)に対し、女性のメタボ該当率(15.1%)は男性の約半分で、女性ではメタボには該当しない「ロコモのみ」の該当率(48.5%)が高いことから、特定健診のみでは拾いきれない女性の健康課題が見えてきました。

次にアンチロコモ教室の介入結果をお示しします。2015年と2016年に開催した教室では

継続参加率は87.6%(169名中148名)であり、データ欠損の無い128名において検討をすると、9種類の測定項目の中の6項目には差がありませんでしたが、バランス能力、下肢筋力、1ヶ月の運動に関する質問票の3項目に向上の傾向が見られ、128名中107名83.6%の下肢筋力が向上する結果となっています。

 

平成28年度の国民生活調査では、要介護になる原因の一位が認知症となりましたが、要支援になる原因は、関節疾患/骨折・転倒が一位となっています。運動器の機能低下は緩やかであり、自身で気づく機会は多くありません。今回の産官学事業の知見を活かし、弊社としては、運動機能測定商品を提供することで様々な所での”ロコモを知り、改善できる場づくり”のお役に立ち、運動機能を改善したいと願う人達の”人づくり”のための運動管理のノウハウ・ドゥハウを提供することで地域包括ケアのお役に立ちたいと考えております。

 

 アルケア株式会社 ヘルスケア事業部 部長 関 良一